ハナムケ

ハナムケ

作品名【ハナムケ】
そのタイトルの通り、友人の、亡くなってしまったわんちゃんに向けて描いた作品です。黒くて大きなワンちゃん。写真でしか見たことなかったけど、お花を贈ろうと思い、私の好きなピンポンマムの花飾りをかけてあげるつもりで衝動的に描いた作品です。エピソード詳細は本文にて語ります。

「安楽死」という選択があること

詳しくないのでよくわかりませんが(ペットを飼ったことがないため)、日本ではペットの安楽死って聞いたことがないような気がします。結婚してドイツで暮らしている友人は、嫁ぎ先で飼われていた大きな黒いワンちゃんをとても大切にしていました。時折写真を送ってくれて、その子の話を聞かせてもらっていたので、彼女がどれほどその子を大切にしていたのかは知っています。

先日、連絡がこないなと思っていたら「実はあの黒い子が、安楽死になると思う」というメールが。どうやらドイツのその地では、わりと一般的なことらしい。病気かなにかで弱っていて、もう長くないからやすらかに逝かせてあげようということなのだろうけど、彼女はそれを受け入れるのが難しいようでいた。

手から伝わるものは確かにあった

彼女はヒーリングなどにも詳しかったものですから(若い時にそんな先生について勉強したことがあるそうで本格的)、その子に一晩、手をあててヒーリングを行ったら、不思議なほどに一時、元気になったのだという。すごいな~!と思ったし、もしかしたらもう少し長く一緒にいられるかもね、という話をしていました。

ヒーリングというとついつい、日本では穿った見方をする人も多いと思います。私も、それで商売をする人達を多少は「スピリチュアル系か~」と思ってしまうところはあったのですが、身内の、大切な人に対して施すヒーリングって、違うと思っています。

私がまだ実家で暮らしていたころ、具合悪いというと、母が手をあててくれていたことがある。それはヒーリングという名前がつくかもしれないけれど、つまりは愛情であり、手から伝わるものであったと思います。

さて、それから2週間ほどたったある朝、彼女からメールが来ました。「朝、起きたら、隣で眠っているように息をひきとっていた」とのこと。

私は思いました。黒い子は、きっと彼女の想いだけでわずかな時間を延命できたのだと。残りの時間をともに過ごすことができて幸せだったのだと思います。安楽死を否とするわけではありませんが、確かにその子は幸せな最期を過ごすことができたんだろうな。素敵なことをしたなぁと思い、この作品を描くに至りました。

あたたかい悲しみがある

プリントアウトできるサイズのデータも急ぎお送りしたところ、すぐにプリントアウトして、ご家族にも見せたのだとか。悲しい出来事ではあるけれど、最後までまっとうしたという意味ではみんな落ち着いていて、絵を見せたらみんな、あたたかな涙を流していたと言っていました。

あたたかい涙、あたたかい悲しみ、温度のある悲しさ。
その表現がとてもしっくりきました。

そのおうちには広い広い庭があり、歴代の亡くなったペットたちが埋葬されているのだとか。みんなのところに帰るようなかんじで、だからなおさらに悲しくはないのかもしれません。

こういう出来事があると、わが人生も振り返る。大切に大切に、生きていれば最後もきっと、大切に終わることができるのだろうな。あたたかい悲しみの中で、私が亡きあともかかわった人たちが穏やかでいてくれたらいいなと、思います。
ね、前向きな話でしょう?

創作活動についてすこし。。。

今回、こうして描いたことで、作品にも温度があるということを実感しました。私の作品にはそれがある、ということを言ってもらえて、衝動で申し訳ないけど描いてよかったなと思えました。私が日々描いているものは、漫画だったりちょっとしたイラストだったりなのですが、誰かの心を励ましたり慰めたり笑顔にさせたり、また幸せな気持ちを呼び起こしたり(またはときめきを与えたりも。)できるように描いていこうと改めて思いました。

だって、描くことそのものが好きだし、
それによって誰かの心に変化を与えることができるなら、そんな幸せなことはありません。

欲が出て、それで商売がしたいとか思うこともそりゃあるんですけども(笑)それが生業となっていけたらなと、しみじみ思うのでした。